グリム童話「ラプンツェル」を令和版にリメイクしてみた

世界の神話

「ラプンツェル」のあらすじ

貧しい夫婦が、隣に住む魔女の畑の野菜「ラプンツェル」を食べた代償として、生まれたばかりの娘を魔女に引き渡します。魔女は娘をラプンツェルと名付け、鍵も階段もない高い塔に隔離しました。ラプンツェルの美しい髪が長く伸びると、魔女はそれを昇降用のロープ代わりに使います。ある日、王子が塔を発見し、魔女の真似をして塔へ忍び込み、ラプンツェルと愛し合うようになります。ラプンツェルは過ちから妊娠し、魔女に気づかれてしまいます。激怒した魔女はラプンツェルの髪を切り、彼女を荒野に追放。後に塔にやってきた王子は、魔女の策略により失明させられ、荒野をさまよいます。数年後、王子はラプンツェルと再会し、彼女の涙で視力を取り戻し、二人は幸せになります。

令和リメイク版「承認欲求のライブタワー」

人気配信者リナ(20代)は、幼い頃に「SNS依存の母」に売られ、カリスマプロデューサーのトウコ(50代、自称「母」)に引き取られました。トウコはリナを「フォロワー200万人を抱える顔」として、外部と完全に遮断された豪華なタワーマンションの最上階に監禁。リナの唯一の外界との繋がりは、毎日決まった時間にトウコが接続するライブ配信だけでした。リナはそこで「誰もが羨む自由なセレブ生活」を演じさせられます。

リナの配信には「投げ銭」という名の「黄金の髪(収益)」が伸び続けます。しかし、リナはトウコに隠れて、配信ツールに仕込まれたバグを利用し、外界のエンジニアであるタカシ(20代)と個人的なチャットで繋がっていました。タカシはリナの窮状を知り、「君をこの情報の塔から救い出す」と約束します。

ある日、リナはタカシに「配信機材の調達が追いつかない」と漏らしてしまいます。その情報からトウコはタカシの存在と、リナが「トウコの支配」という名の規律を破ったことに気づきました。激怒したトウコは、リナのロングヘア(象徴であるID)を物理的に切断。リナを最上階から放り出す代わりに、「フォロワーがゼロの状態」でネット上の荒野(低評価コメントが荒れるSNS)に追放しました。

リナを助けに来たタカシは、トウコの逆襲に遭い、彼の全てのSNSアカウントと個人情報が破壊され、「情報の塔」から追放されます。数年後、ネット上の荒野で、タカシは「いいね」を失い疲れ果てたリナを発見しました。タカシはリナの涙に触れた瞬間、凍結されていた全アカウントが「復活」したかのような感覚を覚えました。二人は力を合わせ、情報の海を生き抜きます。しかし、二人が再会したという情報は、すぐにトウコの新たな配信ネタとして使われたのでした。

解説

①原作との対比

要素グリム童話(ラプンツェル)令和版(ライブタワー)
監禁の場所鍵のない塔(物理的な隔離)タワーマンション最上階(情報的な隔離)
髪(ロープ)昇降用の物理的な髪収益を生むSNS ID投げ銭(黄金の髪)
魔女の目的独占欲孤独承認欲求支配欲(フォロワーからの「いいね」)
王子の罰失明(物理的な視力の喪失)アカウント破壊(情報的な視力・社会性の喪失)

②創作意図の説明

本創作の意図は、元の童話のテーマである「異常な監禁と独占欲」を、現代の「情報と承認欲求」に置き換えることで、現代社会に潜む逃げ場のない狂気を描くことです。物理的な監禁は「社会との断絶」に、魔女の独占欲は「フォロワーからの承認」に置き換えました。現代の若者は「いいね」という名の「黄金の髪」を垂らし、自ら「情報の塔」に閉じこもりがちです。トウコ(魔女)の真の狂気は、リナ自身ではなく、リナが生み出す「承認」を独占することにあります。ラストでは、タカシの「情報の復活」すらトウコに利用されるという結末で、現代の「支配者が監視をやめない狂気」を表現しました。

まとめ

①「ラプンツェル」をリメイクしてみて

いかがでしたか? 髪を切られて荒野に追放されるラプンツェルの悲劇は、アカウントを凍結され、ネットの荒野(低評価コメントの嵐)に放り出される現代の私たちと、どこか重なる部分があるのかもしれません。あなたのスマホの画面の向こうに、今日も誰かの「承認欲求の塔」が建っているかもしれませんね。

②原作について

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本記事でモチーフとした「ラプンツェル」を含むグリム童話は、私たちが知る”美しい絵本”とはかけ離れた、人間の本質的な狂気を内包しています。

当館の考察の原典にご興味がある方は、ぜひ原作をお読みください。

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