フリーターの健太は、毎朝自宅のポストに自分の写真が入っていることに気づいた。写真はいつもモノクロで、まるでスナップショットのように彼の日常の一瞬を切り取っている。最初は悪質ないたずらだと思っていた。
写真に写っている場所は、全て彼が立ち寄った場所だった。コンビニ、駅のホーム、会社のビル…。そしてある日、写真に写っていたのは、彼の自宅の寝室で寝ている彼自身だった。流石に恐怖を感じ、警察に相談したが、確たる証拠がないため対応は及び腰だった。
健太はポストに写真が投函される瞬間を捉えようと、小型カメラを設置した。カメラの映像を確認すると、ポストに写真を入れているのは、彼の隣に住む、いつも穏やかで挨拶を欠かさない老婦人だった。彼女はまるで新聞を配達するかのように、手慣れた様子で写真を投函していた。
警察に通報し、老婦人が捕まった。彼女は健太の母親と同い年で、過去に息子を亡くしていた。「あなたの写真を見ていると、息子が生きているみたいだった」と供述。しかし、警察が老婦人の部屋を捜索した際、大量の健太の写真に紛れて、彼女の息子が亡くなった日の健太の家族写真が発見された。老婦人は健太を息子と重ねていたのではない。実は彼女は、息子の命を奪った交通事故の加害者である健太を見張っていた。


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