一人暮らしの高校生、優太は、部屋の全身鏡に映る自分の姿に違和感を覚えるようになった。鏡の中の自分が、時々、優太が動く数瞬前に動いているように見えたのだ。最初は気のせいだと思っていた。
違和感は日に日に増していった。鏡の中の自分が、優太の背後にいる何かを視線だけ動かして追っているように見えた。ある日、鏡の中の優太が彼の部屋の壁を指さした。優太は恐る恐る壁を調べたが、何もなかった。
優太は全身鏡を移動させようとしたが、鏡は壁にネジで厳重に固定されており、動かすことができなかった。優太は鏡の裏を調べるため、ネジを外そうとした。すると、鏡の向こうからトントンと、ネジが外れるのを数えるような音が聞こえてきた。
鏡を壁から外すと、そこには小さな換気口があり、その向こう側は隣の空き部屋だった。換気口を通して、隣の部屋から優太の部屋が丸見えになっていた。そして、空き部屋の床には、優太が普段着ている服と同じ色の布切れが散乱していた。鏡は、ただの鏡ではなく、特殊なカメラが仕込まれた双方向性ミラーで、隣の部屋から優太の部屋が覗けるようになっていたのだ。そして、鏡の向こうにいたストーカーは、優太と同じ服を着て、優太の動作を真似ることで、鏡の中の優太として振る舞い、優太にメッセージを送っていたのだ。


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