「七不思議を全部見たら、願いが叶うらしいぜ」 蒸し暑い夏の夜、僕ら四人は「肝試し」のために深夜の校舎へ忍び込んだ。懐中電灯の光が、埃の舞う廊下を頼りなく照らす。「動く二宮金次郎像」「開かずのトイレ」……。僕らは冗談を言い合いながら、六つ目までの怪談を順調に「確認」して回った。
最後、七つ目は「理科室の解剖模型が歩く」というものだった。理科室の扉を開けると、そこには確かに模型が立っていた。動く気配はないが、ふと違和感に気づく。床に伸びる僕たちの「影」が、どう数えても五つあるのだ。僕らは四人しかいないはずなのに。
「……おい、誰か増えてないか?」 一人が震える声で指摘した瞬間、五つ目の影がスルスルと動き出し、壁を登って「人型の染み」に姿を変えた。その染みの横には、三つの染みと、さっきまで隣にいたはずの友人の名前が、古びた落書きのように刻まれていた。 振り返ると、そこには誰もいない。僕は一人きりになっていた。
僕は腰を抜かしながらも、必死に校門まで逃げ延びた。翌朝、震えながら教室へ行くと、行方不明になった三人の席には、最初から誰もいなかったかのように別の荷物が置かれていた。クラスメイトに彼らの名を出しても、「誰それ?」と首を傾げられるだけ。そして、一人が不思議そうにこう言った。「何言ってるの? うちの学校にあるのは、昔から『八不思議』でしょ。最後の一つは、『理科室の動く影にタッチされると、壁に吸い込まれて二度と帰れなくなる』っていう有名な怪談じゃない。

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