終電を逃し、真夜中の公園を抜け道をしようとした時、ベンチに座る一人の「青年」を見かけた。こんな時間に、薄いコート一枚で。街灯の光が彼の横顔を照らし、その肌が病的なまでに「青白い」のが気になったが、関わり合いになるのは避けて通り過ぎた。
それから毎晩のように、残業帰りに彼を見かけた。いつも同じベンチに、まるで置物のように座っている。ある晩、あまりの寒さに、私は自販機で買った熱い缶コーヒーを差し出した。彼はゆっくりと顔を上げた。整った顔立ちだったが、やはり血の気が一切ない。彼は無言でそれを受け取ろうと「手」を伸ばした。
その指先が、私の手に触れた。 「っ!」 思わず手を引いてしまうほどの、強烈な「冷たさ」だった。まるで氷に触れたかのようだ。彼は驚いた私を見て、困ったように微笑んだ。「ごめんなさい」と、かろうじて聞き取れるほどの声で呟き、缶コーヒーを受け取った。だが、熱いはずの缶コーヒーは、彼が触れた瞬間から急速に温度を失っていくように見えた。
翌日、気になって同じ時間に通ったが、彼はもういなかった。ベンチには、中身が手付かずのまま、完全に冷え切った缶コーヒーが置かれているだけ。そして、私の手の甲には、昨夜彼に触れられた部分が、まるで軽い凍傷にかかったかのように、そこだけ「青白い」皮膚の「跡」となって残っていた。あの「青年」は、一体何で暖を取ろうとしていたのだろうか。


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