ゾッとする話:待っていた人影

AI小話

父が亡くなり、初めて一人で田舎の墓地へ「お墓参り」に行った。山の中腹にあるその場所は、古い墓石が並び、昼間でもどこか薄暗い。父の墓は、その一番奥にあった。

「いつも」奇妙に感じていたことがある。この墓地に来ると、必ず視線を感じるのだ。父と来ていた幼い頃からそうだった。今日もまた、墓石を磨く背中に、チリチリとした何かが突き刺さる。木々の間、一番古い無縁仏が並ぶあたりに、ぼんやりとした黒い「人影」が見えた気がした。風で揺れる木の影だろう。私はそう思い込もうとした。

線香に火をつけ、手を合わせる。目を閉じた瞬間、風が止み、空気が異様に重くなった。そして、すぐ耳元で、乾いた低い声が囁いた。 「……やっと、一人で来たな」 驚いて目を開けると、目の前にあったはずの線香の煙が、まるで壁に遮られたかのように、私の目の前で渦を巻いて消えていた。

振り返っても、誰もいない。だが、さっきまで「人影」が見えた気がした無縁仏の方から、カサリ、と落ち葉を踏む音が確かに聞こえた。 慌てて墓地を駆け下りる。もう振り返る勇気はなかった。父は、なぜ「いつも」私をこの場所に連れてきたのだろうか。そして、あの声は……私を「待っていた」のだろうか。

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