ゾッとする話:振り返るな

AI小話

その古いトンネルは、地元では有名な心霊スポットだった。ルールは一つ。「中では決して振り返ってはいけない」。もし振り返れば、二度と戻ってこれないという。俺は友人たちと肝試しでそこを訪れ、一人で歩いて渡るハメになった。

湿った空気の中を歩き始めて数分。出口の光がまだ米粒ほどにしか見えない暗闇で、それは始まった。 「ピチャ…ピチャ…」 水溜りを裸足で踏むような音が、背後から聞こえる。それも一組じゃない。二組、三組と、足音は増えていく。まるで大勢が俺の後ろを行進しているようだ。俺はルールを思い出し、必死で前だけを見て歩き続けた。

足音はどんどん近づき、すぐ真後ろ、数センチの距離で止まった。何かの気配が、俺の背中を撫でるように通り過ぎていく。もうダメだ、と思った瞬間、懐中電灯の光が弱まり、プツンと消えた。完全な暗闇。パニックになった俺は、思わずその場にしゃがむ。頭を抱え、ただ嵐が過ぎるのを待った。

どれくらい経っただろう。気配も足音も消えていた。俺は震える手で予備のライトをつけ、出口に向かって走り出した。 トンネルを抜け、朝日を浴びて仲間と合流し、安堵のため息をつく。友人が俺の背中を見て「うわっ」と声を上げた。「どうした?」 「お前、背中どうしたんだよ。泥だらけじゃないか」 俺がリュックを下ろすと、そこには、無数の黒い手の跡がびっしりとついていた。俺が「しゃがんだ」せいで、背中に掴みかかろうとした「奴ら」の手が、代わりにリュックを掴んでいたのだった。もしあのまま立っていたら、俺の背中は…。

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