ゾッとする話:開かずの遮断機

AI小話

その古い踏切は、「開かずの遮断機」として地元で有名だった。理由は、廃線になって久しく、電車など来るはずもないのに、深夜0時を過ぎると必ず遮断機が下り、終電(存在しないはずの)が通過するまで開かないからだ。

俺はその日、運悪く0時過ぎにその踏切に捕まった。カン、カン、と甲高い警告音が鳴り響き、遮断機が下りる。 「ついてない…」 車の中でため息をつく。だが、待てど暮らせど、電車が来る気配はない。

イライラしてタバコに火をつけた時、ルームミラーに映った後部座席に、誰かがいることに気づいた。 (え…?) 振り返るが、誰もいない。 だが、もう一度ルームミラーを見ると、そこには、びしょ濡れの女が、後部座席で膝を抱えて座っていた。

女は、ゆっくりと顔を上げた。その顔は蒼白で、焦点が合っていなかった。 そして、ミラー越しに俺に向かって、ゆっくりと手招きをした。 「…こっちに、おいで」 カン、カン、と鳴り続けていた踏切の音が、その瞬間、ピタリと止んだ。 遮断機は、まだ下りたままだった。

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