ゾッとする話:開かずの霜

AI小話

俺の彼女は、料理は上手いのだが、一つだけ奇妙なルールがあった。 「リビングにある、あの古い冷蔵庫だけは、絶対に開けないでね」 メインで使っているのはキッチンの新しい冷蔵庫で、古い方は電源も入っていないようだった。

ある週末、俺が彼女の部屋で泊まっていた時、深夜に異変が起きた。 キッチンの方から、微かな腐臭が漂ってくるのだ。 (生ゴミか?) 俺は鼻をすすり、匂いの元を探した。それは、リビングの、あの古い冷蔵庫から漏れ出していた。

俺は彼女との約束を破り、古い冷蔵庫の扉に手をかけた。電源が入っていないはずなのに、扉は分厚い霜で固く張り付いていた。 力を込めると、バリバリと霜が割れる音と共に、扉が開いた。 中は空っぽだった。だが、冷凍室には、カチカチに凍った黒い塊が一つだけ転がっていた。それは、ラップに包まれた肉の塊のようだった。

その時、寝室で寝ていたはずの彼女が、リビングの入り口に立っていた。 「…開けたんだ」 彼女の目からは、涙が溢れていた。 「お願い、返して…」 彼女が泣きながら手を伸ばしたのは、俺ではなく、冷凍室の黒い肉の塊だった。 その肉の塊から、まるで赤ん坊の泣き声のような、甲高い音が「オギャア、オギャア」と響き始めた。

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