お話
長年憧れていたヴィンテージの「絨毯」がようやく届いた。深みのある赤色に、複雑な幾何学模様が編み込まれたその絨毯は、私の殺風景なリビングを一変させた。毛足が長く、裸足で歩くと吸い付くような柔らかさがある。私は大満足で、コーヒーを飲みながらその美しい「模様」を眺めていた。ただ、少しだけ独特の、古い家のような埃っぽい匂いが鼻をついた。
数日が経ち、私はあることに気づいた。仕事から帰宅するたびに、絨毯の上の模様が、以前よりも少しずつ鮮明になっている気がするのだ。「目が慣れてきたせいかな」と自分に言い聞かせ、私は絨毯の掃除に精を出した。掃除機をかけると、絨毯の奥から細かな白い繊維のようなものが大量に吸い込まれてくる。私はそれを、ヴィンテージ特有の遊び毛だろうと考え、気にも留めなかった。
ある休日、私は絨毯の上でうたた寝をしてしまった。ふと目が覚めると、部屋は夕闇に包まれていた。足元が少し重い。見ると、絨毯の毛が私の足首を優しく包むように重なっている。私は寝ぼけ眼で「保温性が高いんだな」と感心しながら立ち上がろうとした。その時、足の裏に少し粘り気のある不思議な感触があった。お気に入りのコーヒーをこぼした記憶はないが、絨毯の一部が僅かに湿っているようだった。
私は明かりをつけ、絨毯の汚れを確認しようとした。だが、スイッチを入れた瞬間の光景に、私は声を失った。 足元にある絨毯の幾何学模様。その複雑な線の一つ一つが、今朝見たときよりも明らかに「私の足元」に向かって伸び、密集していた。 さらに私は、掃除機をかけた時の違和感を思い出し、激しい吐き気に襲われた。 あの時、私が大量に吸い取った白い繊維。 ヴィンテージ絨毯の毛であれば、すべて「赤い色」のはずだ。 それなのに、私の掃除機の中に溜まっていたのは、まるで散髪したあとに落ちているような、大量の「誰かの白髪」だった。 私は足の裏を見た。絨毯を湿らせていたのは、こぼした飲み物などではなく、私の肌に触れた瞬間に毛足の間からじわりと染み出した、温かい生体反応のような「汗」だった。
解説
この物語の真相は、リビングに敷いたヴィンテージ絨毯が無機物ではなく、人間の組織を編み込んで作られたものであるというものです。赤い絨毯を掃除しているにもかかわらず、掃除機から大量の「白髪」が出てきたのは、その絨毯が人間の頭皮や髪を素材にして作られている証拠であり、模様が鮮明になり足元へ伸びていたのは、絨毯が栄養源である主人公を捕らえようと血管のように増殖していたためです。また、絨毯が湿っていた原因が、こぼした水ではなく生暖かい「汗」であったという事実は、足元の布地が実は生きた皮膚組織であることを意味しており、主人公が感じていた柔らかさは、絨毯の奥に潜む肉の弾力そのものでした。


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