意味が分かると怖い話:新しいクレヨン

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お話

俺たち夫婦は、息子のハルトが子供部屋を欲しがるようになったのを機に、中古の一軒家に引っ越した。 日当たりも良く、ハルトも大喜びで、リビングの棚には新しく買った写真立てに家族三人の笑顔が飾られている。

ただ、一つだけ問題があった。ハルトが、壁や床に落書きをするようになったのだ。 以前のアパートでは、そんなことは一度もしなかったのに。 「ハルト、ダメじゃないか」 「僕じゃないよ! “お友達”がやったの!」 ハルトはそう言って、新しいクレヨンの箱を抱きしめていた。 (空想の友達か…環境が変わって、ストレスが溜まっているのかもしれないな) 俺と妻は、そう結論付けた。

その夜。俺はハルトの部屋で寝かしつけをしていた。 ハルトが眠ったのを確認し、部屋を出ようとした時、ベッドの下から、コトン、と小さな音がした。 (クレヨンでも落ちたか?) 俺は、ベッドの下を覗き込んだ。

暗闇の中、ハルトが持っているのと同じクレヨンの箱が落ちていた。 俺はそれに手を伸ばした。 その時、俺は気づいてしまった。

そのクレヨンの箱が、俺たちがハルトに買い与えた「12色セット」の箱ではなく、 明らかにサイズが大きい、「24色セット」の箱であることに。

そして、その箱の横、暗闇の奥から、小さな子供の手がもう一本現れ、俺が今まさに手に取ろうとしたクレヨンの箱を、サッと引き戻した。 「…それ、わたしの」 女の子のような、かすれた声が、ベッドの下から響いた。


解説

一見、引っ越した子供が空想の友達(イマジナリーフレンド)を作り出し、イタズラ(落書き)をしているという、よくある日常の話に見える。 しかし、違和感は「買い与えた覚えのない“24色セット”のクレヨン」が、「“お友達”がいる」とハルトが言っていたベッドの下から出てきたこと。 真相は、ハルトの「お友達」は空想などではなく、その家に以前から棲み着いていた「子供の霊(あるいは何か別の存在)」だった。 「落書き」をしていたのは、その「お友達」本人。 ハルトは、その存在と本当に「一緒に遊んで」おり、親(主人公)にはその姿が見えていなかっただけ。 主人公は、息子の「空想」だと思っていたものが、「実在」する恐怖の存在であった決定的な証拠(=物理的なクレヨン)に、至近距離で遭遇してしまった。

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