遠距離恋愛中の恋人と、「ビデオ通話」をするのが日課だった。その夜も、いつものようにスマホ越しに他愛もない話で笑い合っていた。
突然、彼女の動きが止まった。あくびをした、その瞬間の顔でピタリと「フリーズ」したのだ。「あ、また固まった」と、電波の悪さを笑った。いつものことだ。
だが、5秒、10秒経っても、画面は動かない。 「おーい、聞こえる?」 私がそう呼びかけた瞬間。 「フリーズ」しているはずの彼女の顔。その、あくびで大きく開かれた口の奥の暗闇から、ゆっくりと、白く細い「別の顔」がヌウッと現れ、こちらを覗き込んできた。
私はスマホを投げ捨てた。 すぐに、スマホが床の上で震え出す。着信だ。彼女からだ。 恐る恐る通話ボタンを押すと、彼女の慌てた声が聞こえた。 「ごめん! ごめん! 今仕事が終わったよ!会議が長引いちゃって大変だったよ〜 ……ねえ、なんで黙ってるの?」 じゃあ、さっきまで「通話」していたのは、誰だったんだ。


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