「夜中」に、ふと目を覚ました。アパートの隣は小さな公園になっており、寝室の窓からその様子がよく見える。その日、目が覚めたのは、奇妙な音のせいだった。
ギィ……コ、ギィ……コ。 公園の「ブランコ」が揺れている音だ。こんな時間に誰が。窓からそっと外を覗くと、薄暗い街灯の下、二つ並んだブランコのうち、一つが確かに大きく「揺れている」。
だが、よく見ると、誰も乗っていない。 風か。いや、もう一つのブランコは微動だにしていない。そして、揺れ方がおかしい。まるで、透明な誰かが「漕いでいる」かのように、規則正しく、勢いを増したり、弱めたりしている。 恐怖で目が離せずにいると、その「見えない誰か」は、不意に漕ぐのをやめた。
ブランコがゆっくりと静止していく。 そして、今度は、今まで静止していた「もう一つのブランコ」が、ギィ……コ、とゆっくり揺れ始めた。 見えない「何か」が、こちらに乗り移ってきたのだ。 そのブランコは、俺の部屋の窓の、真正面だった。


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