意味が分かると怖い話:息切れの理由

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残業で終電を逃し、タクシーでマンションに帰ってきた。時刻は深夜1時過ぎ。私はオートロックを解除し、エントランスホールに入ってエレベーターのボタンを押した。

「チーン」という到着音を待っていると、さっき開けたばかりのオートロックのドアが再び開き、二人の警察官が入ってきた。 「こんばんは、深夜にすみません。巡回です」 年配の警察官が、少し息を切らせながら私に敬礼した。 「最近、この近くで不審者の目撃情報がありまして。特に深夜はお気をつけて」 「そうなんですか…。ありがとうございます、ご苦労様です」 彼らの存在に、張り詰めていた緊張が少しほぐれた。

「チーン」 ちょうどエレベーターが1階に到着した。 「どうぞ。我々は非常階段を使って、各階の通路を確認しながら巡回しますので」 若い方の警察官が、私に先に乗るよう促した。なんと親切な人たちだろう。私は「お疲れ様です」と会釈し、一人でエレベーターに乗り込んだ。

ドアが閉まり、自宅の階のボタンを押す。密室になった途端、私はホッとして壁にもたれかかった。 (パトロール、強化してくれてるんだ。安心した…) そう思った、次の瞬間。 ある強烈な違和感が、私の思考を停止させた。

(あれ…?) (さっきの警察官たち…なんで二人とも、あんなに息を切らせてたんだろう…?)

(「巡回です」って、今まさにエントランスに入ってきたばかりだったのに) (まるで、どこかから全力疾走してきたみたいだった…)


解説

主人公が遭遇したのは、偽物の警察官、あるいは職務を逸脱したストーカーである。

最大の違和感は「息切れ」。 もし彼らが外から「巡回」で歩いてきたばかりなら、エントランスに入った時点で息が切れているはずがない。

彼らが息を切らしていた理由は、主人公がオートロックを解除してマンション内に入ってくるのを近く(例えば、死角になる駐車場や、あえて開けておいた非常階段の踊り場など)で待ち伏せし、主人公がエレベーターホールに入ったのを確認してから、慌てて「今、外から入ってきた」フリをして駆け込んできたからである。

「階段で確認しながら巡回する」という言葉は、「親切な職務遂行」に見せかけた「ストーカー行為の宣言」だ。 彼らは主人公がエレベーターで上がるのと競争するように階段を駆け上がり、主人公が部屋に入る瞬間まで、その動向を確認するつもりだったのである。)

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