ゾッとする話:二度くぐる

AI小話

地元の古い神社の入り口には、珍しく朱色の鳥居が二つ、重なるように並んで立っています。幼い頃、祖母は私の手を引きながらこう言いました。「一つ目は現世の汚れを落とすため、二つ目は神様の懐に入るため。だから、行きも帰りも必ず二つともくぐらなきゃいけないよ」と。

就職活動に失敗し、心身ともに疲れ果てた私は、縋るような思いでその神社を訪れました。夕暮れ時、蝉の声が響く中、私は教え通りに一つ目の鳥居をくぐり、続けて二つ目をくぐりました。境内はひんやりと冷たく、拝殿で「私の居場所が見つかりますように」と切実に祈りを捧げました。

参拝を終え、石段を下りようとした時です。背後から「あんた、さっきは一つしかくぐらなかったね」と声をかけられました。振り返ると、掃除をしていた見知らぬ老人が私をじっと見つめています。「いえ、二つともくぐりました」と私が否定すると、老人は力なく首を振りました。「いや、一つだ。あんたが最初にくぐったのは、もう何十年も前に取り壊されて、今はもう存在しないはずの『三つ目』の鳥居だよ」

心臓が跳ねました。慌てて今来た道を振り返りましたが、そこには鳥居など一本もありません。ただ、不自然に生い茂った深い藪と、真っ暗な森が広がっているだけでした。私が先ほどくぐったのは、現世の鳥居ではなく、死者が通る「三つ目」だったのです。出口を失った私に、老人は歪んだ笑みを浮かべて言いました。「ようやく、居場所が見つかったようだね」

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