お話
大学生最後の夏休み、僕ら五人は地元の「川遊び」スポットに来ていた。ここは水深が急に深くなる場所もあり、注意が必要だが、その分水は冷たくて最高だった。僕らは浅瀬にサンダルを脱ぎ捨て、泳いだり、岩場から飛び込んだりして夏を満喫していた。
昼過ぎ、友人の健二が「足が攣った」と言って、慌てて川から上がってきた。見ると、彼の右の「足首」には、まるで誰かに強く握られたような、指の形の青アザがくっきりと浮き出ていた。「誰だよ、水の中で引っ張ったの。死ぬかと思ったぞ」と健二は憤慨したが、他の三人はその時、離れた対岸で釣りをしていたはずだった。
健二は怖がって「僕はもう入らない」と言い、岸にある大きな岩の上で昼寝を始めた。僕ら四人はその後も泳ぎ続け、夕方になってようやく荷物をまとめ始めた。健二を起こしに行くと、彼はまだ岩の上で丸くなって寝ていた。直也が健二の肩を揺らすと、健二はひどく怯えた様子で飛び起きた。「おい、帰るぞ」と言うと、健二は「……サンダル、一足足りないんだけど」と呟いた。
「何言ってるんだ、そこにあるだろ」と僕は健二の足元を指差した。しかし、岩の下の浅瀬に並んでいるサンダルを数えて、僕は息が止まった。サンダルは、僕、直也、真奈美、早紀……。全部で四足しかない。 「誰の分がないの?」と早紀が尋ねると、健二は震える指で、自分が履いている「はず」の足元を指した。 そこには、健二のサンダルが片方だけ、寂しそうに転がっていた。 僕はゆっくりと、夕日に照らされた川面を見た。深い淵の底から、健二の「もう片方のサンダル」が、ぷかりと浮いてきた。
解説
この話の真相は、健二はすでに川底に沈んでいるというものです。健二は自分がすでに死んでいることに気づいておらず、友達とも普通に会話できていました。それは周りの友達も健二が死んでいることに気づいていなかったためです。健二は、最後に浮いてきたサンダルと共に、川底に沈んでいます。もし、健二が「足が攣った」と主張している時に、そばまで駆けつけていれば助けられたかもしれません…


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