真冬の出張。凍えながら辿り着いた地方のビジネスホテルは、外壁に霜が降りるほどの寒さだった。通された部屋も冷え切っており、私はすぐに暖房の温度を最大に設定した。冷え切った体を休めようと、部屋の半分を占める大きな「ベッド」に倒れ込む。だが、横になった瞬間、マットレスが「ミチッ……」と、濡れた布を絞るような湿った音を立てた。
「古いスプリングだろうか」と思いながら、私は深い眠りに落ちた。数時間後、喉の渇きと異様な熱気で目が覚めた。暖房が効きすぎている。それと同時に、部屋には不快な「生臭さ」が充満していた。最初は古い配管の臭いだと思ったが、どうやら臭いの発生源は、私の真下、このベッドの内部にあるようだった。
さらに妙なことに気づく。私の体に合わせて、マットレスが沈み込みすぎているのだ。寝返りを打つたびに、背中の下で何かが「ヌチャッ」と蠢くような感覚がある。気味が悪くなった私は、意を決してシーツを剥ぎ取り、マットレスの側面にある点検用のジッパーを勢いよく開けた。
中から溢れ出してきたのは、スポンジではなく、熱気に蒸されて強烈な異臭を放つ「人間の衣服」と、どろりと溶け始めた肉の塊だった。 マットレスの中身は巧妙にくり抜かれ、そこに一人の男が「詰め込まれて」いたのだ。 暖房で温められたことで、男の死体から出た脂がマットレスの繊維に染み出し、それが潤滑剤となって、私の動きに合わせて「形を変える」心地よい柔らかさを生み出していた。 私が「快適だ」と感じていたあの沈み込みは、男の肋骨が私の体重に耐えかねて、一段ずつ折れていく感触だったのだ。 開いたジッパーの隙間から、熱で膨張した男の指先が、私の足首を招くようにゆっくりと飛び出してきた。


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