「とりあえず最後まで読んだけどあの場面ってなんの意味が合ったんだろう」「この作品めちゃくちゃ好きだわ〜次も似たような作品を読みたいけど調べるのがめんどくさいな〜」
読書好きにはよくある悩みだと思いますが、この記事を読むと
①作中で出てくる伏線を理解する
②「殺戮にいたる病」の狂気名場面を振り返る
③「殺戮にいたる病」が面白かった人におすすめの本を知る
ことができます。
管理人は年間100冊以上小説・ビジネス書を読んでいるため、分かりにくい箇所を簡単にまとめて解説してみました。
最後にはジャンルの似ている本を紹介するので気になる人は是非チェックしてみてください!
あらすじ

何ものかに憑き動かされるように次々と猟奇殺人を重ねていく蒲生稔。冒頭の“エピローグ”で示される事実が、最終章でひっくり返る。異常犯罪者の心の軌跡をたどりながら、想像力の欠如した現代人の病巣を抉る、衝撃のサイコ・ホラー。
※以下ネタバレしかないです!読後に読むことをおすすめします!
伏線と回収

伏線1:「稔≠雅子の息子」のせいでずっと漂う地味な違和感
・一人目の被害者「江藤佐智子」は稔を年上の男性として扱う
→引用文
稔は同じ文学部の院生だと嘘をついた。〜中略〜
「専攻は何にするつもり?」〜中略〜
「哲学にしようかなって思ってるんです。まだはっきり決めたわけじゃありませんけど」〜中略〜「哲学。じゃあぼくと同じだ。ぼくは今、ニーチェをやってるんだけどね」〜中略〜「へえ、ニーチェですか。ーじゃああたしも、そうしようかな。幸いこうしてニーチェの”権威”とお知り合いになれたことだし」佐智子は媚びるように笑いかけた。
→同じ年くらいの男性に「権威」はなかなか使わない
・義母と同居状態であることが分かる伏線
→引用文
夫の給料は、贅沢を言わないかぎり、彼女が働きに出る必要のないほどはあったし、彼がもともと両親と住んでいた一軒家も、五年前に義父が他界してからは夫の名義となっている。
→義母が死んだとは書いてない
・稔≠雅子の息子ではないことの伏線
→引用文
息子の様子がおかしいと思い始めて以来、雅子は再び彼の部屋のごみ箱を漁り、手紙に目を光らせるようになっていた。〜中略〜
それに気づいた夫には、「もう大人なんだから、つまらないことはやめておけよ」言われたが、やめることなど考えられなかった。〜中略〜
稔が試験のために大学に出かけたのが昼食を終えてからだったので、雅子は二時頃になって息子の部屋に入った。
→夫である稔に息子の部屋を漁るような「つまらないことはやめておけよ」と釘を刺されているので、稔が出かけたのを見計らって息子の部屋に侵入
・稔が大学生ではなく大学教授であることの伏線
→引用文
「稔さん。大学はどうしたの?」彼女は不服そうに言った。
「…ちょっと熱っぽいから。どうせ授業は一つしかなかったし。前期は皆勤した講義だしね、一回くらい休講してもかまわないさ」
→学生なら「休講する」とは言わない
・稔が40過ぎ男性であることの伏線
→引用文
しかし、鈴鹿を再現したらしいサーキットを一周することはおろか、最初のコーナーで壁に当たった後、行きたい方向へ進むことすらできないでもたもたしているうちにゲームは終わっていた。〜中略〜
「いや、すごい。信じられない」偽らぬ本心だった。
「まあ、オジンには無理かもね」
少しむっとはしたものの、これほどの違いを見せつけられると、やはりもうすでに反射神経でこの年代の連中には勝てないのだろうと納得した。
→大学生で(20前半)この感想はでない
→オジンと言われている
・稔≠雅子の息子ではないことの伏線2
→引用文
三月・稔〜中略〜
マキの性器が腐り、乳房も萎んだとき、稔は煩悶を抱えながら目的もなく街をさまよった。
三月・雅子〜中略〜
あの子に先天的な欠陥がないことは分かっている。かつてはマスターベーションをしていたのだから。でも最近は?恋人ができたようにも見えないのに、最近一向にその気配がないのは何故だろう?
→稔は被害者の性器や乳房を持ち帰り自慰に使う習慣があり、雅子は息子の部屋のゴミ箱を漁る習慣がある。
稔は実際自慰しまくっているが、雅子チェックでは息子は自慰をしていない=別々の人物
伏線1に対する考察:
稔は、雅子の息子ではありませんでした。
作中では、稔と母親(雅子の義母)、雅子と信一という親子関係が存在します。雅子と稔は夫婦です。
信一は作中ではほぼ出てこず、稔の殺人を止めるために登場し、速攻で亡くなります。
信一が全く出てこないことにより、読者はしっかりと「稔=雅子の息子」と刷り込まれていきます。信一が急に出てきて亡くなるとこで皆さんパニックになったのではないでしょうか😆管理人は、「え?こいつ誰?」と言いながら遡って理解しようと思いましたが、突き止められずに一旦諦めて最後まで読んで衝撃を受けつつも理解出来ず、ネットで調べてやっと理解できました!
伏線2:よそよそしい雅子の息子
・雅子が息子の異変を心配するシーン
→引用文
しかし、この数ヶ月の彼の様子は、思い返してみれば普通ではなかったように彼女には思えた。何かに脅えているようにも見えた。苦しんでいるようにも見えた。雅子の視線を避けているくせに、彼女をじっと見つめているらしい時もある。仲が良かったはずの妹にも、ほとんど口を利口としない。〜中略〜
・息子に邪魔された稔が息子を包丁で刺すシーン
→引用文
その時、これまで気に留めないでいたいくつかのことが結びつき、ことの真相がおぼろげながら見えてきた。庭から消えていた二つのビニール袋。テープを入れっぱなしにしていたビデオカメラが、覚えもないのにテレビ代の中にしまってあったこと。いつも、そして今日もずっと誰かに見張られているような気がしていたこと。気づかれていたのだ。俺のしていたことをすべて。何もかも。
伏線2に対する考察:
息子は稔(父親)を疑っており、稔を調べていた。信一は雅子視点では、優しくてよく気付く子と表現されていますが、本当に気づいていましたね!
ちなみに稔が庭を掘り返した際にビニール袋が2つ足りませんでした。1つは雅子が、1つは信一(息子)が掘り返したことによって足りませんでした。
伏線3:自分が選ぶターゲットの基準が自分でも分からない稔
・自分が選ぶターゲットの基準がわからなかった稔が閃くシーン
→引用文
彼女達は一体何故俺に選ばれたのだ?
似ていた。彼女達はみんな似ていた。俺自身に。かつて「可愛いわね」と言われていた頃の俺自身に。ーそして、もちろん母さんにも。
・稔が母親への感情を思い出すシーン
→引用文
子供の頃、母を愛していた。心から愛していた。ある夜におしっこをしに起き、父が母をいじめているところを見た。母の股の間に顔を埋め、母を泣かせていたのだ。しかし母は抵抗しなかった。いじめられるがままになっていた。翌日、昼寝をしている母を見たとき、心が騒いだ。白い太股に触れるのも久しぶりだった。
スカートをそっとまくりあげ、腰まであるズロースの、股の部分をめくろうとしていた。父さんが何をしていたのか判ると思ったのだ。
その時父さんが部屋に入ってきた。赤鬼のようになって怒り出し、「エロガキ」とか「ヘンタイヤロウ」とか訳の判らないことを言い、稔をぶち、驚いて目を覚ました母さんもぶった。
伏線3に対する考察:
稔は小さい頃、同い年の女の子には何も感じなかったが、実母には性的な関心を寄せていた。父親に制圧され、反抗した稔を母がぶったことにより、稔の母親への愛は失せていた(抑圧されていた)が、犯行を繰り返していくうちに「母親を愛していたこと」を思い出す。
ターゲットを選定する基準は、「母親に似ている女性」でした。
管理人が選ぶ狂気名場面トップ3

トップ3:息子の部屋のゴミ箱を漁って、自慰行為の回数を把握する母親
息子に過干渉気味の雅子は、息子がいない間に部屋の中をくまなく調べて日々変化を探しています。エロ本の位置や友達からの手紙にも目を通すように心がけており、ゴミ箱の中のティッシュを調べて自慰をどのくらいのペースでしているかまでチェックしています。
これ、娘にはそんなことしてないのが余計に怖いです。
自分の母親がと考えると身震いする思いです。稔と母親、真一と雅子。どちらも異常な親子関係ですよね。
トップ2:姉の物が欲しくなる癖が抜けないカオル
「姉は私が殺したんです」というほど罪の意識があると思いきや、姉を殺した犯人を突き止めるために樋口と共同捜査している間に、樋口に「抱いてくれ」とお願いします。
カオルの姉は樋口に片思いをしていたが、想いが通じることなく殺されました。
しかも、姉は離婚を経験しているのですが、その原因は旦那とカオルの不倫です。
その背景があっての「姉のものが何でも欲しくなる癖が直ってないみたい」はよく言えたな!!!と思いました。
クズすぎて管理人は「クズやな!こいつ!」と独り言を吐き捨てました…
トップ1:2人目の被害者の一部で自慰する稔
生粋のネクロファイルの稔は、被害者を死姦しただけでは飽き足らず、愛し合った遺体と離れたくないという想いから、遺体の一部を切り取ります(乳房)
持ち帰った乳房を使い、お風呂場で自慰をします。眺めながらとかならまだ理解はできるのですが、稔は自分の胸に貼り付けて興奮します。
管理人はつくづく感じました。恐怖とは自分の理解できないもののことだと。
「殺戮にいたる病」が面白かった方におすすめの本3選

ハサミ男:殊能将之
美少女を殺害し、研ぎあげたハサミを首に突き立てる猟奇殺人犯「ハサミ男」。3番目の犠牲者を決め、綿密に調べ上げるが、自分の手口を真似て殺された彼女の死体を発見する。自分以外の人間に、何故彼女を殺す必要があるのか。「ハサミ男」は調査をはじめる。
葉桜の季節に君を想うということ:歌野晶午
内容説明 「何でもやってやろう屋」を自称する元私立探偵・成瀬将虎は、同じフィットネスクラブに通う愛子から悪質な霊感商法の調査を依頼された。 そんな折、自殺を図ろうとしているところを救った麻宮さくらと運命の出会いを果たして―。
イニシエーション・ラブ:乾くるみ
僕がマユに出会ったのは、代打で呼ばれた合コンの席。やがて僕らは恋に落ちて……。バブルにわく1980年代後半の世相や流行を背景に、甘美でときにほろ苦い青春のひとときを瑞々しい筆致で描いた青春小説——―と思いきや、最後から2行目で、本書は全く違った物語に変貌する。
コメント