「読後感最高すぎて、まだこの物語に浸っていたい」「この作品めちゃくちゃ好きだわ〜次も似たような作品を読みたいけどどうやって調べたらいいのか分からない」
読書好きにはよくある悩みだと思いますが、この記事を読むと
①「コンビニ人間」の怖面白名場面を振り返る
②「コンビニ人間」の「素敵な表現」名場面を振り返る
③「コンビニ人間」が面白かった人におすすめの本を知る
ことができます。
管理人は年間100冊以上小説を読んでいるため、分かりにくい箇所を簡単にまとめて解説してみました。
最後にはジャンルの似ている本を紹介するので気になる人は是非チェックしてみてください!
あらすじ

「コンビニ人間」として生まれ変わってから19年間、コンビニでアルバイトとして働き続けてきた主人公・古倉。異物を「正常化」する場所の一部であることに満足を感じつつ、家族や友人の詮索の目から逃れるために、古倉はコンビニをクビになった白羽さんとの歪な共同生活を始めるのだった……。
管理人が選ぶ怖面白い名場面トップ3

トップ3:人生舐めた態度の白羽を冷静に見つめる古倉
初心者のくせにコンビニ店員という地位を見下している白羽の鼻水を見つめているシーン
→引用文
「はあ、わからないこと?コンビニのバイトで、ですか?」
白羽さんは鼻で笑い、笑った拍子に鼻がプーという音を出し、鼻水が鼻の穴に膜を作っているのが見えた。
白羽さんの紙で作ったような乾燥しきった皮膚の裏側にも、膜をはるような水分があるのだなと…
店長に勤務態度を指摘された後に陰でボソボソと悪態をつく白羽を見つめているシーン
→引用文
「威張り散らしてるけど、こんな小さな店の雇われ店長って、それ、負け組ですよね。底辺がいばってんじゃねえよ、糞野郎…」〜中略〜
差別する人には私から見ると二種類あって、差別への衝動や欲望を内部に持っている人と、どこかで聞いたことを受け売りして、何も考えずに差別用語を連発しているだけの人だ。白羽さんは後者のようだった。〜中略〜
まるで私みたいだ。人間っぽい言葉を発しているけれど、何も喋っていない。
世の中への恨みを延々と語る白羽を見つめているシーン
→引用文
「〜中略〜誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」
どちらかというと白羽さんが性犯罪者寸前の人間だと思っていたので、迷惑をかけられたアルバイト女性や女性客のことも考えずに、自分の苦しみの比喩として気軽に強姦という言葉を使う白羽さんを、被害者意識は強いのに、自分が加害者かもしれないとは考えない思考回路なんだなあ、と思って眺めた。
急に失礼なことを言い出す白羽を見つめるシーン
→引用文
「バイトのまま、ババアになってもう嫁の貰い手もないでしょう。あんたみたいなの、処女でも中古ですよ。薄汚い。縄文時代だったら、子供も産めない年増の女が、結婚もせず村をうろうろしてるようなものですよ。ムラのお荷物でしかない。俺は男だからまだ盛り返せるけれど、古倉さんはもうどうしようもないじゃないですか」
さっきまで文句をつけられて腹をたてていたのに、自分を苦しめているのと同じ価値観の理屈で私に文句を垂れ流す白羽さんは支離滅裂だと思ったが、自分の人生を強姦されていると思っている人は、他人の人生を同じように攻撃すると、少し気が晴れるのかもしれなかった。
→自分の悲惨な現状は世界のせいだと考えている白羽が、ことあるごとに人生舐めた態度で人に悪態をつく様子を冷静に分析してて面白いですよね。しかもそれが的確で合理的なので余計に切れ味が鋭いです。自分が憤っている時に、一番そばにいて欲しくない人材ですね。
白羽をペットだと思っている古倉
→引用文
「取引といっても、報酬は必要ありませんよ。あなたは僕をここに置いて、食事さえ出してくれればそれでいい」
「はあ…まあ、白羽さんに収入がない限り、請求してもしょうがありませんよね。私も貧乏なので現金は無理ですが、餌を与えるんで、それを食べてもらえれば」
「餌…?」
「あ、ごめんなさい。家に動物がいるのって初めてなので、ペットのような気がして」〜中略〜
白羽さんを飼い始め。コンビニでの私はさらに順調だった。ただ、白羽さんの分の食費がかかる。今まで休んでいた金曜と日曜もこれからはシフトを入れてもらおうかと考えると、ますます身体がよく動いた。〜中略〜
「あの、一緒に暮らしてる人は…今日はお出かけ?気を遣わせちゃったかな…」と言った。
「え?ううん、いるよ」
「えっ!?ど、どこに?ご挨拶しないと…」
慌てて立ち上がった妹に、「別にそんなのしないでいいよ。ああ、でもそろそろ餌の時間かあ…」と言い、台所に置いてあった洗面器に、ご飯と、鍋の中にあるお湯で茹でられたじゃがいもとキャベツを入れ、風呂場に持って行った。
白羽さんはバスタブの中に敷き詰めた座布団に座ってスマホを弄っており、私が餌を渡すと黙って受け取った。
「お風呂場…?お風呂に入ってるの?」
「うん、一緒の部屋だと狭いからそこに住まわせてるの」
妹が唖然とした顔をしたので、私は詳しく説明した。
「あのね、うちって古いアパートでしょ。白羽さん、古いお風呂に入るくらいならコインシャワーの方がいいんだって。シャワー代と餌代の小銭をもらってるの。ちょっと面倒だけれど、でも、あれを家の中に入れておくと便利なの。皆、なんだかすごく喜んでくれて、『良かった』『おめでとう』って祝福してくれるんだ。勝手に納豆して、あんまり干渉してこなくなるの。だから便利なの」
→この古倉の素の異物感が好きです。これ、実際にいると思うんですよね。古倉みたいな人。他人と違うということに気づいていて擬態している人。心からは共感できないし、反応の仕方がわかっているわけではないけど、情報として学習しているから生きていけてるみたいな。
歯に衣きせぬ物言いで逆に親切な義妹
→引用文
「はあ…!?え、それで二人で暮らしてるんですか!?この男は無職なのに!?」
「ええと…はい」
「やってけるわけないじゃないですか!行き倒れになりますよ!?というか、あの、初対面で失礼ですけど、けっこういい歳ですよね。何でアルバイト!?」〜中略〜
「ある意味お似合いって感じですけど…あの、赤の他人の私が言うのもなんですけど、就職か結婚、どちらかしたほうがいいですよ、これ本気で。というか、両方したほうがいいですよ。いつか餓死しますよ、いいかげんな生き方に甘えてると」
「なるほど…」
「この人のこと好きって、ぜんぜん趣味が理解できませんけど、だったらなおさら就職したほうがいいですよ。社会不適合者が二人で、アルバイトのお金だけでやっていけるわけないですから、まじで」
「はい」
「周りは誰も言ってくれなかったんですか?あの、保険とかちゃんと入ってます?これ本当に、あなたのためを思っていってるんで…初対面ですけど、絶対にちゃんと生きた方がいいですよ!」〜中略〜
「あの、ちょっと聞いてみたいんですけど、子供って、作ったほうが人類のためですか?」
『は!?』〜中略〜
しばらく何の音もせず、ひょっとしたら電話が切れてしまったのかと思ったが、ぶわあ、と、携帯から生ぬるい空気が吐き出されてきそうなほど、大きな溜息の音がした。
『勘弁してくださいよ…。バイトと無職で、子供作ってどうするんですか。ほんとにやめてください。あんたらみたいな遺伝子残さないでください、それが一番人類のためですんで』
「あ、そうですか」
『その腐った遺伝子、寿命まで一人で抱えて、死ぬとき天国に持って行って、この世界には一欠けらも残さないでください、ほんとに」〜中略〜
私の遺伝子は、うっかりどこかに残さないように気を付けて寿命まで運んで、ちゃんと死ぬときに処分しよう。
→かなり辛辣なことを言われても怒りが怒りが沸かない古倉がさすがです。
白羽の義妹がまさに「普通の価値観で強く生きている人」という感じで好きです。なかなか1回しか顔を合わせたことのない他人に「遺伝子を残すな」は言えないですよね。コンビニの仕事仲間のように陰湿ではなく、ド直球で読んでて気持ちよかったです。
管理人が選ぶ「素敵な表現」トップ3

トップ3:小鳥が死ぬのは可哀想なのに、花は平気で殺している
→引用文
小鳥は、「立ち入り禁止」と書かれた柵の中に穴を掘って埋められ、誰かがゴミ箱から拾ってきたアイスの棒が土の上に刺されて、花の死体が大量に供えられた。
「ほら、ね、恵子、悲しいね、かわいそうだね」と母は何度も私に言い聞かせるように囁いたが、私は少しもそうは思わなかった。
→周りの子供達は小鳥が死んでしまって可哀想だと泣いている中、「食べよう」と言ってしまう古倉。「可哀想」という感情自体も分からないが、小鳥はかわそうなのに小鳥のために引きちぎられている花が可哀想判定されないことによって余計意味が分からないのだろうと思いました。確かに。と思わされる表現でした。
トップ2:「私」を形成しているのは私のそばにいる人たち
→引用文
今の「私」を形成しているのはほとんど私のそばにいる人たちだ。三割は泉さん、三割は菅原さん、二割は店長、残りは変年前に辞めた佐々木さんや一年前までリーダーだった岡崎くんのような、過去のほかの人たちから吸収したもので構成されている。
特に喋り方に関しては身近な人のものが伝染していて、今は泉さんと菅原さんをミックスさせたものが私の喋り方になっている。
→意識してしている人は少ないかもしれませんが、これは皆当てはまると思います。真似していなくても、そばにいる人に似てくるものです。古倉は自分が普通ではないと自認しているため、それを意識的にしているだけです。ハッとさせられる表現ですよね。
トップ1:嫌いな人に評価されるために頑張るの?
→引用文
「皆が足並みを揃えていないと駄目なんだ。何で三十代半ばなのにバイトなのか。何で一回も恋愛をしたことがないのか。性行為の経験の有無まで平然と聞いてくる。『ああ、風俗は数に入れないでくださいね』なんてことまで、笑いながら言うんだ、あいつらは!誰にも迷惑をかけていないのに、ただ、少数派だというだけで、皆が僕の人生を簡単に強姦する」〜中略〜
「だから僕は結婚をして、あいつらに文句を言われない人生になりたいんだ」と言った。〜中略〜
「え、自分の人生に干渉してくる人たちを嫌っているのに、わざわざ、その人たちに文句を言われないために生き方を選択するんですか?」
それは結局、世界を全面的に受容することなのでは、と不思議に思った〜中略〜
→白羽は結局、世界の一部になりたいんでしょうね。それにしても誰にも迷惑かけてないは嘘すぎて笑いました。迷惑かけまくってるので人生を強姦されているのではなく、自業自得な気がします。古倉が同じこと言うならまだしもですよね。
「コンビニ人間」が面白かった方におすすめの本3選

「黒冷水」:羽田圭介
兄の部屋を偏執的にアサる弟と、執拗に監視・報復する兄。出口を失い暴走する憎悪の「黒冷水」。陰湿な兄弟喧嘩がどんどんエスカレートしていき、遂には殺意が芽生えてしまうほどに。兄弟間の果てしない確執に終わりはあるのか?
「俺俺」:星野智幸
なりゆきでオレオレ詐欺をしてしまった俺は、気付いたら別の俺になっていた。上司も俺だし母親も俺、俺ではない俺、俺たち俺俺。俺でありすぎて、もう何が何だかわからない。増殖していく俺に耐えきれず、右往左往する俺同士はやがて──。
「月と蟹」:道尾秀介
「ヤドカミ様に、お願いしてみようか」「叶えてくれると思うで。何でも」──家にも学校にも居場所が見つけられない小学生の慎一と春也は、ヤドカリを神様に見立てた願い事遊びを考え出す。100円欲しい、いじめっ子をこらしめるなどの他愛ない儀式は、いつしかより切実な願いへと変わり、子供たちのやり場のない「祈り」が周囲の大人に、そして彼ら自身に暗い刃を向ける……。
コメント